2012/12/19

ドイツメディアの反応 2012衆院選


DZGOブログに掲載したものです。
陸続きのヨーロッパの真ん中で暮らしていると、「戦争はいつでも起こりうる」という感覚を抱くことがあります。“足手まとい”の債務国ギリシャやアイルランド、ポルトガルを抱えるEUは、そもそもヨーロッパでの戦争をこれ以上起こさないと国際協調の立場で設立されました。EUという枠組みで、国と国との争いの火種になる経済問題を軽減するため、通貨の統一やヒト・モノ・カネの流通を促進させる政策がとられています。
ドイツとフランスの間には長く続いた戦争の歴史があるが、両者は少なくとも経済統一を図り歩み寄っています。だからといって、この二国間に問題がないわけではありません。未だに領土問題もあります。
一方、日本に目を向けてみると、今回の選挙結果では、安部総裁の自民党が最も多くの議席を獲得したことから、日本のこれからの方向性が、ヨーロッパが目指す方向とは逆の方向、つまり、ナショナリズムが色濃く出ていたように感じられました。
ドイツのメディアがどのように報じているのか、衆院選当日と翌日のテレビ・新聞(インターネット含む)の記事に注目しました。
----------------------------------------
衆院選当日は、テレビ・ラジオ各社の報道では、「自民党が返り咲き」「80年代の勢いを失った(落ちこぼれた)日本が勢いを取り戻せるか」と日本の衆院選結果が伝えられた。個人的にどんな内容が伝えられたかということよりも、「そもそもどんな位置でニュース番組に取り上げられるのか。何番手に来るのか」というところが気になっていた。というのも、フクシマ以降、日本についてメイン報道番組で大きく取り上げられることがめったにないからだ。
17時(日本時間17日深夜1時)からのTagesschau(NHKニュース的番組)、20時のTagesschau共に、三番に日本の衆院選結果が報じられた。久しぶりに大きく取り上げられたので、変な安心感があった。
「南ドイツ新聞Süddeutsche Zeittung」 17日朝刊
過去へ向かう、右傾化
というタイトルで始まる、Christoph Neidhart氏の論評は、日本政治のこれからの行方を「右傾化」として警戒している内容だ。
「民主党は自民党の真似事をしたにすぎない」として、自民党であれ民主党であれ、これまでどちらかというと常に保守系が政権を握っていたということを書きつつ、石原慎太郎の存在にも触れている。
元東京都知事であり、尖閣諸島問題で強硬な態度をとる石原慎太郎は、中国の話題になると、中国を公然と差別的な呼称である“支那”と呼ぶ。日本のためなら核兵器使用も辞せず、尖閣諸島をめぐる中国との小さな戦争も恐れていない態度だ。また、他の右傾ポピュリストとともに、選挙に悪質な響きと極右の要請(den bösen Ton und die Forderung der Rechtsextremen)を謳い、それらを社会に通用させたのだ。
自民党が政権を握ることで、今後の日本の「強い日本の復活」を期待するというより、安倍晋三の政策内容を懸念している。
安倍は前回の首相就任時より、改憲を試みていた。安倍はすべての交戦権を禁止し、領土内の自衛を認めている平和憲法を廃止するとともに、人権の制限や男女平等を削除していくことも視野においている。…: 近い将来就任する総理大臣(=安倍)は過去の“ある日本“を夢見ている。
Niedhart氏の日本社会、そして日本の政治文化に対する指摘
① 「左派」と呼ぶに値する政党、つまりここでは与党の反対勢力が日本には長いこと存在していない
② 自民党にしがみついた産業に依存している日本のメディア
戦後、社会党や共産党が強かった時代や学生運動が盛んな時期もあったが、それらの「左派・左翼」は、自然と消えていったのではなく、一方で鎮圧され、他方で、政界のメインストリームに組み込まれ、窒息してしまったのだ。…フクシマ以降、「原子力村」日本に示されるように、いかに原子力産業、学術界、政界そしてメディアが、癒着関係にあるかが明らかになった。
----------------------------------------

0 件のコメント:

コメントを投稿