平和村での研修も大詰めを迎えている今日この頃。
私は、6~15歳までの男の子の部署に最初に配属され、その後、村に滞在する男の子の人数が膨れ上がり、9歳以下と10歳以上の部署に分かれてからは、10歳以上の男の子の部署で働いた。
大きな男の子のお世話をするにあたって大変なことは、たくさんあるけれど、働けてうれしいことは、何といっても彼らが夜ベットに就くまでの自由時間で色々と話ができる時間が、他の年齢の子どもに比べて多いこと。
今日は、そんな彼らとの就寝前の時間中に起こった事をつづっておこう。
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夜8時。
子どもたちが暮らす三階建ての建物の二階までの子どもたちの就寝時間がやってきた(一番大きな男の子たちは、建物の最上階におり夜9時まで起きていてよいことになっている)。
いつも通り、子どもをベットに送っていると、ある子どもに聞かれた、
「Saki、人間は昔、サルだったんでしょ?」
私は、何をいきなり!と思いつつも、「そうよっ」と当然のように返答して、隣の部屋へと移った。
再びさっきの部屋に戻ってみると、また同じ質問をされたので、 【人間は猿から進化した】ということを、実演付きで説明したら、その部屋の住人の一人ウ
ズベキスタンの少年に泣かれてしまった。
涙を目に浮かべ必死にこらえながらも、「そんははずはない」と。
そして、別のアフガニスタンの少
年も、半信半疑で私のくどい実演に目をやる。
ドイツ語が達者な彼は、コーランにそのようなことは書かれていないし、コーランの内容を教えてくれる先生からも、親からもそんなことは習っていないから、信じられないということを話してくれた。
その直後、大雨&暴
風。
「ほら、サキ(がそんな変なこというから)、アッラーが雨を起こしたんだ」と。
平和村で暮らす子どもの約半分、もしくは半数以上はアフガニスタン、タジキスタン、ウズベキスタンなどのイスラム教徒が国民の多数派を占める国から来ている。
そんな国々からやってきた平和村の子どもたちもまた、敬虔なるイスラム教徒。
泣かれた彼をはげますため、
「あなたがお父さんや先生から習ってきたことがあるように、私も学校や両親に教わってきたことがあって、それらは違うね。けど、世の中にいろんな肌の色を持つ人がいるように、それぞの食べ物や言葉があるように、どうやって人間ができたかというお話も何通りもあるんだね。今、あなたは怪我の治療のためにドイツへやってきてるけど、そもそもドイツとウズベキスタンが全く同じような国だったら、わざわざドイツに来ることもないよね。」
と、進化の話からは少しそれたけれど、宗教に関わらず、ヨーロッパ(=キリスト教)の国々があなたたちの国(=イスラム教)と手を取りあっているからこそ、ドイツで平和村に来る子どもたちの治療が可能で、元気になって故郷に帰れるんだということを、伝えたかったという、そんな一日となった。
このことを、Facebookでつぶやいたら、多くの反響を得た。
元小学校教員の友人の、「心のものさしがぐんぐん伸びる環境にいられるのは、大変だけど、幸せなことだね。」というコメントを読んで、彼のあの涙は辛さを表しているけど、その辛さはつまり幸せの一部でもあるんだ、彼の将来にはきっといい意味で残ってくれるだろうと感じられた。
「教育にショックは必要」というコメントをくれた、別の小学校教員。たしかに、何かを学ぶ時、大きな喜びや不快感、驚きを感じるほど、のちのち記憶に残るものだ。
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そんな泣いた彼、信じられないと困惑していた彼らにとって、私が安易に説明した「私規準」の話をしたことを少し反省するとともに、違っているということを共有できる子どもたちにそして大人になってもらいたいなと、心から願います。