2012/04/26

『桃太郎(平和村編)』

Der April macht was er will. (4月はわがままし放題)

ドイツ語でこんな表現がありますが、これは4月の変わりやすい天気のことを指しています。
4月も終わりだというのに、今年は特にわがまま放題。
なかなか気温は上がってくれないし、晴れていたかと思うと雨が。そして時には雹(ひょう)が降る始末・・・。
4月の心をつかむのは難しい。

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平和村での活動もそろそろ10ヶ月目が終わろうとしています。
こうやって村の中で子どもと直に関わりながらの活動は、残り2ヶ月。早いものです。

10ヶ月目の今月は、普段の「大きな男の子」の部署から「Kleine Kinder=幼児組」に助っ人として移動して働くことに。
2~5、6歳がいるここでは、内科器系・泌尿器系の病気を抱えた子どもから、火傷の子ども、骨髄炎で両足の長さが違う子どもなどが生活をしています。この年齢の子どもたちのお世話をするにあたって、今までより「預かっている責任」の念を感じます。年齢が若ければ若いほど、平和村で過ごした記憶は遠くなるものの、けれど「三つ子の魂百まで」というように、幼い時の性質は、彼らが歩む人生を左右するものになりうるからです。

さて、そんなことを感じながら、彼らを寝かしつける時、物語を話すようにしてます。

この前話したお話は『桃太郎』。
しかし、バックグラウンドはドイツで、内容は平和村に合うように即興編集 済み◎

Kleine Kinder
2011年 平和行進にて。
写真:ドイツ国際平和村提供

『簡略・桃太郎』 平和村編 編集Sakinder Bird

・子どものいないおじいさん(Opachen)とおばあさん(Omachen)は、教会に行き神さまに子どもがほしいということをお祈りしていました。

・優しいおばあさんは、おじいさんが仕事へいくとき、疲れた時のためにサンドイッチの他に手作りのチョコレートを渡していました。

・2人には子どもがいなかったので、桃から出てきた子どもを、「Pfirsich-Jungchen (桃太郎)」と名付け、育てることにしました。

・ある日、おじいさんとおばあさんが、居間で何やら困った表情を浮かべながら話していました。
「最近、隣町から鬼(Monster)がこちらへ出てきては、食べ物ほしさに民家を荒らし、しまいには家や教会などすべてを壊して去っていく。そのうち、うちにもやってくるかもしれない。それを思うと、心配で心配で夜も眠れない。」

・Pfirsich-Jungchenはおじいさん・おばあさん、そして村を守るべく、Monster退治に出かけて行きました。おばあさんは、そんなPfirsich-Jungchenのために、手作りのチョコレートを持たせました。
「疲れたら、これをお食べ。」

・「桃太郎さん、僕たちにもその美味しいチョコレートをわけれくれんかね?」と、チョコレートの美味しい匂いにつられてついてきた犬・さる・キジ。
「Monster退治!?桃太郎さん、僕たちお供しますよ!」
「そうかいそうかい、それなら、このおばあさんの作ったおいしいチョコレートをわけてあげよう!」

・Pfirsich-JungchenたちはさっそくMonsterを探し、ついにかつて町の領主さんが住んでいた大きな家の中で昼寝をしているMonsterを見つけます。

「だれだ、オレの昼寝の邪魔をするやつは!!!!!」

・Pfirsich-Jungchenは殴り合いの争いではなく、話し合いでMonsterと理解し合おうとつとめました。
その話し合いをするための一つの方法として思い浮かんだのが、おばあさんの美味しい手作りチョコレートを渡すことでした。

・このチョコレートに感動したMonsterは涙がこらえきらず、わんわんと泣きます。
「こんな美味しく愛情が詰まったものは食べたことがない。こんな人たちを苦しめていたなんて、本当にひどいことをしてしまった。」

と、Monsterは反省、Pfirsich-Jungchenとは友達になり、自分が壊した家や教会をせっせとせっせと直し、村には再び平穏の日が訪れました。 おしまい。




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これを子どもたちに聞かせ、眠っていく子どもたち・・・と思いきや、興奮して物語を反復する子どもたち。でも、どうやらとても気に入ってくれたようでした。

即興で内容が変わった理由は、「殴り合いはしない」「分け合う」ことを伝えたかったからです。

次は何のお話をしようかな。

2012/04/20

Generation Kunduz -The war of the others

Index

アフガニスタン北部のクンドゥツ(Kunduz)という町を舞台に、5人の若者に焦点を当てながら今のアフガニスタンをおったドキュメンタリー映画。

アフガニスタンからもドイツで治療を必要とする子どもたち引き受けている平和村。
これは見逃さずにはおれない、とスタッフ+研修生あわせて9名で、この映画が上映されるデュイスブルクの映画館に足を運んだ。

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10歳の靴磨きのミルヴァイス。タリバン政権下、パキスタンで避難民として生活をしていた一家の長男。
タリバン撤退後、アフガニスタンへ帰還したはいいが、家族は満足に稼ぎがえられず、この少年は学校に通いながらも、家族のために毎日靴磨きの仕事に従事している。

「ぼくが家族を支えなければ」
「世の中はやっぱりお金が必要だ」
「この不運な人生から抜け出すためにも、しっかり勉強し将来は医者かエンジニアか、学校の教師になる」

と、凛とした、でもどこか悲しげな表情で話す10歳の彼。
私が10歳だったころ、どれだけ自分が生きる社会をみていただろうかとふと考えた。
彼はタリバンがどんな人たちなのか、外国の兵がアフガニスタン各地にいることをどう思うか、なぜ家族はまずしくなってしまったのか、いろんなことをインタビューで語っていた。

女性が外に出て働くことが、未だに一般的ではないと言われているアフガニスタンの地方ラジオ局で働く女性、ナザニンや、“自由”をもとめてフィクション映画を撮る若い男女グーラムとカテラ、自由で公正な平等選挙の実現を夢見て活動を続ける大学生、ハジブ。

タリバン政権下、そして外国軍が駐在するアフガニスタンで育った彼らが、どのように世の中を変えていこうと活動しているか、切望しているかを、この映画は教えてくれる。


監督は、長年ドイツ公共放送ADRやDeutschlandfunktなどでジャーナリストとして活躍しているマルティン・ゲルナー(Martin Gerner)。記者としてアフガニスタンの情報を発信する一方で、アフガニスタンの次世代ジャーナリストを育てる活動もしている。

この映画を通して、海外メディアが報道する内容だけではわからないアフガニスタンの「今」を知ることができ、「アラブの春」のような大規模な反政府デモ・抗議活動ではないけれど、彼らの地道な自由への活動を通して、アフガニスタンの「これから」を少なからずも展望できた。
そして何より、毎日平和村で接しているにも関わらず彼らの故郷、アフガニスタンを自分の目で見たことがない私にとって、彼らがどのような生活環境におかれているか、どのような人たちと生きているかを知る貴重な映画だった。



Interview with Martin Gerner Part 1(in German)


2012/04/15

イースター休暇 2012

日本で新年度をむかえたころ、ドイツではイースターの祝日があり世間は連休。
学校はイースター前後に2週間ほどの休みに入っています。

そんな世間の休みとは関係なく、平和村では常に誰かが働いています。
が、
私の場合、年間の休暇をイースターに合わせて申請していたので、
ひょっくらミュンヘンへと飛んできました。

三度目のドイツは、気温の変化が激しくて改めて【衣替えのできない地域】ということを実感していたのですが、イースターでもさらに念押しされてしまいました。
4月も6日だというのに、朝目が覚めると外は雪景色。

 

外の気温はマイナス。
一週間前まで気温20度とは思えない冷え込みです。

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<サイクリング~ミュンヘン郊外へ~>
イエスが復活したとされるイースター月曜日。
サイクリングを決行し、腹ごしらえにミュンヘンの人気カフェへブランチに行く。

真ん中の丸いペーストは、私の苦手なレバーヴルスト(=レバーソーセージ)です。バターのようにパンに塗って食べます。私にはこの美味しさがまったくわからない。。。。



~サイクリング開始~
ミュンヘン市内を南北に流れるイザ川に沿って、南西へ向かう。
ミュンヘン市民に愛され、なくてはならない存在のイザ川。
留学時代はよく友人と川沿いでBBQを楽しんでいました。
真夏になっても、アルプスの雪解け水が流れているため、見た目よりもずいぶん冷たい。
そのままビールケースをつけているグループもよく見かける。

川沿いの道は散歩やジョギングを楽しむ人、サイクリングをする人などさまざま。



ミュンヘンはドイツの中でベルリンやハンブルグに並ぶ5大都市の一つではあるけれど、
【大きな田舎】といわれるように、少し外へ行けば、もうそこは一面に緑の広がる豊かな田舎町。

二本に分かれた道の真ん中で、行き先を決めかねていると、いかにもバイエルンのおじいちゃんが親切に声をかけてくれる。もちろんバイエルンなまりのドイツ語で(私はこのなまりが大好き)。
「どこに行きたいんかね、君たちは」


        

        寄り道 
案内してもらうとともに、
素敵な教会も紹介してもらったので少し立ち寄ることに。




そして紹介してもらった町の小さな教会。

【教会の中】

中はイースターだからか、パイプオルガンの曲が流れていた。
なんて心地よい。
けれど、写真のごとく扉に鍵がかけられてあったので、教会内部の奥まで入ることができない。
これは教会内に立てられてある数々の彫刻のうち数点が盗まれたかららしい。

案内してくれたおじいさんの話:
「私は、昔イランにあるドイツ人学校に教師として派遣されたことがある。イランにはキリスト教者もおり、彼らの教会がある。イランではいつも教会は開放的だったが、像が盗まれるなんてことはなかった。」
観光地だけでなく、こんな田舎町の教会の像も盗難にあってしまう現実。
個人の利益のためではなく、こういった文化財は公益であり守っていかなければならない
という意識を養うことは改めて大切だと感じた。



向こうにうっすら見えるのはアルプス。


森の中、長い砂利道をサイクリング。
5時間後、ようやく目的地のAyingへ到着!


締めはAyingの地ビール『Ayinger』

「プロースト!(=乾杯)」